【オズ部隊、過去の記憶】

 

 

 

ここは、忍者村。 江戸時代にあった小屋のような家が、転々としてあった。
そして山や草木が覆い茂るそこは、自然豊かな場所に存在した。 雰囲気で例えるとすれば、皇国あたりとでも言おうか。
しかし忍者村は、皇国には存在しない。 どの地図にも載っていない・・・いや、載せていないその村はある意味、秘境というべきだろう。
これは、その秘境の村で暮らしている、ある“忍び”の物語 ―――――

 

 

ある昼下がりの忍者村。


「でやぁ!」 ガキンッ

「せぇい!」 キーンッ


気持ちのいい金属と金属が擦れ合う音と、
少年2人の威勢のいい声が混じりあい、村に響き渡っている。


「まだまだぁ!せいやぁ!」 ギンッ

「なんの!そいぁ!」 ガキキンッ


2人の少年は、剣の修行を行っている真っ最中だった。

しかし、少年達が手に持っているものは、
木の棒や木刀などではなく、真剣…つまり本物の刃がついた刀だ。
少し手元を狂わせたり、
相手の攻撃に避けきれなかったりすれば、即死亡というわけだ。

何故そんな危険なことをしているのかというと、
木刀などでは、たとえ当たっても打ち身ができるくらいで、大して傷を負うことはない。
しかしそういった感覚があると、
いざ敵と対峙したときに油断が生まれるからだ。
真剣を持って対峙することで、
少しの油断もあってはならないという緊張感を保たせる為の訓練でもあるのだ。


「…見えた!そこだぁ!」 ガッキーン!

「っ!? うわぁ!?」


黒髪で覆面をした、忍者らしい格好をした少年は、
長い赤髪を後ろに束ねた少年の刀を弾いた。

刀は空高く、クルクルと回転しながら宙を舞う。

赤髪の少年は尻餅をついたまま、
黒髪の少年を睨みつける。



「…おいオズっ!今本気で俺を斬ろうとしただろ!すんげぇ危なかったぞ!」

オズ「ぜぇ〜んぜん?そんなこと1ミリしか思ってなかったぜ?ジズの実力が足りないだけだっての!」
ジズ「1ミリは思ってたってことじゃねーか!!」


オズと呼ばれた少年は、ジズという少年を一瞥してそう言い放った。
ジズはそんなオズの態度に頭にきたのか、そのまま立ち去ろうとするオズを引き止める。


ジズ「おいちょっと待てよ!いちいち俺の癪に障るようなこと言ってくんじゃねえよ!俺を怒らせたいのか!?」
オズ「もう怒ってんじゃん。別にお前が怪我したって俺はなんとも思わないし?どうでもいいってうか」
ジズ「どうでもいいだと!?てめー…!もう許さねぇ!泣いて謝ったってもう知らねーぞ!!」


オズのしれっとした態度に怒りで手を震わせ、我慢の限界とばかりにジズはオズに殴りかかった。
それを察したオズは、素早く身を低くしジズの攻撃を避ける。


オズ「あっぶないなぁ…ったく。因みに今のは“怒車の術”の練習だから。引っかかってくれてありがとよ」
ジズ「あぁ!?“怒車の術”!?なんだよそりゃ、意味わかんねぇけどすげえ腹立つ!!」


因みに“怒車の術”というのは、相手をわざと怒らせ冷静な判断を失わせるという心理話術で、
“忍び”の戦術の一つでもあったりする。
オズの先程からのしれっとした態度も、ジズをわざと怒らせる為の演技であった。

実際、ジズが怪我でもしようものなら顔には出さずとも心配はする。
口には出さずとも、「大丈夫だろうか」と気にはかける。

しかし、オズは普段から“忍び”として、表情をあまり出さないように訓練している。
敵にこちらの考えを悟られないようにする為に。

だから、素直に言葉を言えなくなってしまった部分もあった。
今となっては、もうそれに慣れてしまったが。


…話がそれた。

それはともかくとして、
オズはカンカンに怒っているジズを放って、家へと戻った。

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